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異世界から来たみきみき


その日、

局での打ち合わせを先に済ませ

秋月律子が765プロにやってくると

事務所の様子が騒がしかった

どうも みきみきこと

星井美希の様子がおかしいと

他のアイドルたちが

騒然としているのだ

「また変なものでも

食べたんでしょー」

呆れて休憩スペースの

ソファを覗いてみると

その美希は律子を見るなり

開口一番

「お母ちゃん!」

と目を輝かせた

ハァ?

・・・・・・・・・・・・・・・・

「で、アンタはその地球を守る

一員なワケ?」

律子は

一通り、というか

何度聞いても美希の話は

要領を得ないのだが

もう一度確かめた。 「そうよ?」

雪歩に入れてもらった

お茶をすすりながら

美希はまるで

当たり前のことのように答えるが

どれも素っ頓狂な

はなしばかりである。

律子が美希の母親であるとか

だんちゃん

(高槻やよい)は

もっとちっちゃいとか

地球は宇宙人に狙われていて

自分は宇宙艦隊

地球防衛科の生徒であるとか。

だがそれらの話は

不思議と筋が通っていて

嘘を言っているわけでも

その場その場で

考えて答えているわけでも

なさそうに見える。

そして何よりその格好が

どうみても宇宙服なのである。

それもコスプレの類では

到底再現できないであろう

本格的に頑丈で見当がつかない

素材が使われている。

「お母ちゃんはここで

なにしてんの?」

率直に美希が聞いてくる (お母ちゃんて…)

と思ったが、

本人はとぼけて聞いている

ようにも見えず

とりあえずそのまま

質問に答えることにする

「わたしはそのー、

テレビなんかで、その、

お仕事させてもらってる

つまりは

アイドルというか ……」

改めて見知った人間

である美希に

自分をアイドルと

紹介する事に

少々ためらいを感じて

律子は歯切れ悪く言い淀んだ。

すると美希が先走って 「大道具さん?」と訪ねた。 「アイドルよ!」

少しムカッと来た。 「お母ちゃんが?」

美希は大層驚いて

心の底から意外そうな顔をする

それは本当に自分の母親が

アイドルだと

聞かされたような顔だった。

「そうよ!悪い?」 「ふーーーーん、

そうなんか……」

美希は狐にでも

つままれたように

虚空に目を泳がせていたが

……………やがて

「プッ」

と堪えきれずに

吹き出す様子が見て取れた。

律子に気づかれまいと

誤魔化そうとしたのが

よけいに腹がたった。

「あああああ!

りっちゃん落ち着いて!」 「みきみきは

寝ぼけてるだけだよ!」

飛びかかろう

とした律子を

慌てて

亜美真美が静止する。 「それはいつもでしょ!」 「いつもだけど!」

こんなのぶっ叩いたら

すぐ目が覚めるわよ!

と意気込んだ律子だったが


結局ぶっ叩き回復作戦は

他のアイドルの必死の

説得により

律子が平常心を取り戻して

中止となった。

──── つづく。

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